2019年12月11日水曜日

大助鉢、残念!

ここ数年の大助鉢の値上がり具合は、過去に他の作家の作品においてちょっと記憶にないほどの好調さといえるでしょう。その様相は、小鉢世界全体が好調であるというのではなく、大助だけが飛びぬけての独り勝ちという雰囲気だから、まったく驚かされます。


大助・染付外縁丸 間口6.3×奥行き6.3×高さ3.3cm

そんな情報が飛び回る業界では、じっと落ち着いてなんかはいられません。老いたりと言えども俺も盆栽屋のはしくれとばかりに、近隣の親しい同業者の小鉢のショーウインドウの中を半日がかりで物色。夕闇が迫る頃にようやく小さな桐箱に入った大助鉢を一つ見つけだしました。


そして汚れた箱の蓋を開けて二度目のびっくり!
鉢には小さな価格のシールが貼ってあって、な、な、なんとその金額は、あきらかに10年以上前の昔のままの数字じゃありませんか!


ちょっとひるんだ私でしたが、そこはベテラン、勇気を出して思い切って「これ、いくら?」と訊ねてみました。
書いてあるんだから聞く必要はないとも言えるでしょうが、明らかに昔の相場と認識できる数字ですから、相手は友人だし、これは気がとがめるのが普通ですよね。
すると、その数字を見たその友人は、またまたびっくり、書いてある数字の七掛けの金額を言ったのです。きっとこの友人は桐箱の底に押し込まれている鉢の銘柄を見ずに、シールの数字だけを見ていたんでしょうね。薄暮の時間帯だったし。


ここまでくればもう遠慮することもないか!
それでもちょっとばかり気もとがめましたが、素直に言い値の金額をお支払いして、めでたく取引成立という段取りに相成りましたが、勝負の世界は厳しいんですよね。友人といえど油断は禁物ですね。

ところでこの場合、私の値切りのテクニックの「廉いときは値切れ!」はまさか実行できませんでした。なぜなら、この鉢が大助だと相手さんが気がついた時点で、おそらく話は振り出しに戻ってしまうでしょう。もちろん言い分は私にありますが、普段から親しい同業者ですからね。そんなわけで暫くぶりで言い値で買いました。


と、ここまでのお話ならば、私だけが掘り出し物を見つけた自慢話で終わるのですが、このお話には続編があるんです。


結論を言いますと、家へ帰ってよく検品しますと、ボディーの下部から足にかけて窯傷(カマキズ)というか、釉(クスリ)ハゲのような傷がかなりあって、とても完品と云える代物ではなかったのです。


足にも窯傷(カマキズ)あり。ただし、ボディーの部分にニューがないのがせめてもの救いです。画像ではよくわかりにくいですがね。


それにしても、同業者もこの大助鉢にこんに傷があるとは、もうとっくの昔に忘れていたはずでしょう。ただ普段の宮本のように、検品もろくにしないで、ましてや言い値で慌てて買っていったな、なんて今頃不思議がっているんじゃないかと思いますよ(笑)。


戦いすんで日が暮れて、今日は慌てた私の負けでした!
明日からまたがんばりまーす!

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