2018年11月27日火曜日

高根島超ミニ水石

瀬戸内海の中部(広島県)に三つの峰と深い谷を持つ高根島(こうねじま)という
周囲約11キロに満たない小さな島があります。柑橘栽培の農業が主幹産業であり
住民の八割はこれに携わってるそうです。

さてその高根島ですが、大きさのわりに高い峰と深い谷が特徴で、その谷に産する
石が瀬戸内海の波洗われて抜群の味わいを発揮。特に持ち込ん
で時代感のついた超ミニにおいて魅力的です

高さ4.2cm 慈母観音像
高根島石の特徴が際立った色艶と形状。

高さ4.7cm 慈母観音像
これもまた高根島石らしい超ミニである。

高さ4.8cm 二軒家
二軒長屋の茅舎としては抜群の形状なり。

7.2cm 島形石
山の風景とも激しい海の風景とも見立てられます。



高さ6.0 山形石
泰然としたスケールのおおきな風景。



2018年11月8日木曜日

作る・けやき箒立ち

過去の培養を遡ってみると2015年の秋の記事に10年目とあるので、今年で13年目を迎えた計算になるこのけやき。枝先は細かく分岐し、まさに煙るがごとく霞むがごとくです。
晩秋の夕陽に照らされて枝元に僅かに残された落葉が一瞬の輝きを放ちながら、今まさに冬を迎えんとしています。

10年目の写真と現在を比べると、昨年から今年にかけて肥料をかなり控えめにし、シーズン中に完全な葉刈りを1回、そして軽めの葉刈りを1回と、都合2回の葉刈りを励行してきました。

その間の新芽摘みはもちろんのこと、葉透かしや葉切りなどの細かい手入れも適宜におり込んで、枝先に勢力が集中しないように務めてきました。

ただこの時点までくると反省点も見えてきたようです。過ぎたるは及ばざるが如しともうしますが、ベテランの愛好家さんなら既に目ざとく見つけているでしょう。

10年目の写真と比べて見ると、枝先は確かに細かくなってはいますが、わずかながら枝先が痩せ気味で、さらに徒長ぎみです。これ以上痩せ気味で再生能力を落としてしまうと、もし樹形が乱れ場合など修正回復が難しくなります。よって、盆栽の真髄は古色感と時代感とはいえ、万が一の場合の回復力も蓄えておく用心深さも必要ですね。
来春には植替えと輪郭線の追込みを敢行し、樹勢をしっかりと若がえらせてやるつもりです。

2018年11月4日日曜日

五葉松(銀八つ)

銀八つ(ぎんやつ)と呼ばれる性質の五葉松の種類が、戦前から広く盆栽界に普及しています。四国の鬼無地区が江戸時代からの伝統に支えられた主な産地です。

江戸時代に接木の技術が確立されて以来、台木には黒松苗そ用いているため生育もよく樹勢は非常に強壮です。葉の針が太くて強靭で、いわゆる葉性(はしょう)が銀色に輝き豪華で荘厳なイメージです。さらにかなりの肥培をしても徒長しにくい性質のため、樹形の乱れも少なく樹形を整えやすいのも大きな特徴です。

幼苗の時代に、足元から幹筋にかけて鉄針金で強く螺旋状に模様をつけるのが独特の作り方です。そのために足元が癒着して田螺(たにし)のようにトグロを巻いているのが一種のゴテモノとみなされて、評価を下げる原因となっていた時代もありました。

しかし、短所は長所なりという言葉があるように、短所は個性でもあります。長い年月を経ると、人の手でつけた模様がまるで天然のものとの区別がつかないほどに味わいを深めます。

このように、作者の意図をこえて劇的な魅力に出会えるのも盆栽趣味ならではの予期せぬ幸せな瞬間のようです。

螺旋状に捻転した幹筋は、台木である黒松の部分であると思われますが、すでに数十年の長い年月を経た皮肌の荒れ模様を簡単に観察しただけでは、この部分が黒松なのか五葉松なのかは簡単に識別はつきません。

反対方向から視た五葉松。

足元では倒れ込んだ根とその上からの覆いかぶさった根とが、癒着したような奇観を呈しています。この部分が黒松であるかあ五葉松であるかはすでにこの盆栽の魅力には関係のないことです。あるがままの侘び寂びと自然美を我々は素直に受け入れるべきでしょう。

みなさんも銀八つの古びた素材を見つけ、その魅力を再生させてみませんか。案外身近にいいものが転がっているかもしれませんよ。