2011年11月15日火曜日

銘鉢発掘・安納功生

盆栽鉢を鑑賞したり蒐集する場合、有名作家や産地のいわゆるブランドものばかりではなく
作品の出来栄えや味わい本位でものを見る姿勢が大切です

その精神で、ブランドにとらわれず純粋にものを見る目を養っていくと
今まで見えなかったもが少しずつ見えてきます

もちろん、有名作家や産地の作品は、ある一定の水準以上のものが多いのは当然ですが
冷静に見てみれば、平凡な作柄のものだってたくさんありますよ

陶芸は「土と炎の芸術」といわれ
どんな名人だって最後のところは、人の意のままにならない偶然の力を借りるわけです

ですから、無名作家の作品にだって、思いもよらない炎の力が働いて
趣のある作品が出来上るってこともあるわけです

そんなわけで、作者名や産地名のブランドにこだわらず
これはおもしろい、この味わいはいいと感じた作品に出会ったら

このつれづれ草でみなさんにご紹介いたしましょう


安納功生・辰砂釉窯変切立長方 間口7.8×奥行き6.7×高さ4.0㎝

かつて栃木県に、堅牢な構成のボディーと渋い釉薬で知られた
菊池春陽という鉢作家がいました

平安東福寺や平安香山などのように、盆栽界の末端にまで知られるほどの存在ではありませんでしたが
その堅実で味わいのある作風は、いわゆる通人の間ではなかなかに高い評価を得ていました

私も昔、春陽の井上良齋ばりの「夕日磁」風の秀品を持ったことがあり
なかなか味わい深い作品であったことを覚えています

ところで、今日ご紹介した「安納功生」という作家の詳細は知られていませんが
拠点が栃木県であったことや、その他伝え聞いた情報や作風からの推測によると
どうも功生はその春陽の周辺で活動した作家であるらしいのです


ほどよい角度で上に開いたボディーの重厚感が秀逸であり
下辺の下紐の力を受けとめた二段の切り足との調和がとれています

そして、何よりも縁から大胆に掛け流した辰砂釉が
窯変によって神秘的な効果をあげているのが最大の魅力です


窯変の効果は正面だけでなく、裏面や側面でも大きな効果をあげていて
一種不可思議な雰囲気を盛り上げています


鉢底にも釉薬が施されており、落款部のみそれが抜かれています
落款は「功生」

かなり長い間使われてきたらしく
時代感がよく、それが辰砂釉の神秘的な雰囲気にさらなる趣を添えています

相場的な評価は低くとも
座右において当分楽しみたいと思っています

では、また!

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