2005年5月2日月曜日

支那鉢の魅力1・古さへの憧れ

近年の盆栽界は、日本鉢全盛の時代といえる人気傾向を示しています

大き目の盆栽鉢では舟山や行山などが代表的で、小品盆栽では東福寺を初めとして一陽、香山
そして、絵鉢では湧泉、石州、一石など、枚挙に暇がないほどです

とはいえ、盆栽は支那鉢の存在を抜きにしては語れず
歴史を振り返っても、それらがこの世界の発展に果たしてきた役割は非常に大きいのです

昔はまったくの高嶺の花であったものが、価格面から言っても近年では
以前では考えられないくらいの身近な相場で買えるようになりました

盆栽屋.comも、そろそろこのあたりでみなさんに、古い「支那鉢」の優秀さを再認識し頂くために
優品の発掘に乗り出したいと考えています

それにあたって、盆栽屋.comがいうところの「支那鉢」とは、あくまで「戦前」の中国で製作されたものを指し
戦後から現在に至るまでの新渡(しんとう)とは厳しい一線を引いている、それをお伝えしておきます

よろしいですか、この厳しい一線が支那鉢を語る上で非常に大切なのですよ
戦争をまたいだだけで、両者の品質はまるっきりレベルの違うものなのです


支那鉢 白均釉三味胴長方鉢・しろきんようしゃみどうちょうほうばち

外見的な支那鉢の特徴は第一にそのすっきりとした「線」の美しさに有り
直線、曲線とも一発仕上げの技による端正で優美であることが持ち味です

オートメ化されていない時代の、高度な手作りの技があればこその線の持ち味です
それに加え、土味の堅牢さ、釉薬の冴えなど、今日の新渡では決して見られない奥行が感じられます

そして、何よりもおよそ100年前に作られた作品です
長い年月が釉薬に落ち着きを与え、侘び寂びを求める盆栽人の心に訴えるかける趣があります

このように三味線の胴のような膨らみを持った独特のボディーを「三味胴」と呼びます
かの三琇一陽にもこの形の作品がみられますが、やはりそのルーツは支那鉢にあったのです

人気抜群の釉薬である均釉の中でも「白均釉」はごく少ないもので
白耕交趾(しろこうち)とは厳然と区別されます


縁の内側が使い込みにより真っ黒ですね
胴の部分は、釉薬の白さを浮き立たせるために時代を擦り落としたと思われます


鉢の内部には一発仕上げのヘラ痕が見られます
これが支那鉢の特徴です

まさしく、名人・水野東福寺など日本鉢の先人達が目指した世界がこれなのです
彼らは支那鉢に学び、それらを凌駕する作品を目指し血の出るような努力をしました


価格のことに触れるのはこのつれづれ草の本位ではありませんが、敢えて申し上げると
一昔前(およそ15年以前)であれば、この白均釉クラスでは市場価格は確実に10万円以上でしたね

価格下落の要因は、まず新渡の過剰な輸入による相対的な価値観への心理的影響と
さらに、支那鉢本来の持つ優美な間口と奥行きの比率が、現代の太味のある盆栽では窮屈になった
その2点が主な理由でしょう

しかし、価格は下がっても観賞価値は下がるものではありませんし
とくにミニ盆栽においては、それほどの奥行きを必要とはしない場合が多いので
このあたりが支那鉢の優秀さを見直す絶好の機会だと思います

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