2015年9月23日水曜日

初級・中級盆栽集中講座(5):掘り出し素材の改作

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。
  • 時期:一年中
  • 適用樹種:全樹種
  • 目的:埋もれている盆栽素材を短期間に観賞価値を高め、立派な盆栽として育てていく(やりがいありますよ)
  • 道具:全て
  • レベル:超初級から達人まで、素材の魅力を見分ける眼力を身につけたら、安価で楽しめ、やめられない(成功した時の喜びは格別!)
  • ここがポイント
    • まず眼力を鍛えることが第一です
    • それには経験をつむことと
    • 名木をたくさん鑑賞すること(感心してばかりしていちゃあダメ!どんな名木でも自分のものだと思って遠慮なくケチをつける(口に出してはダメですよ)
    • そして、更に樹格を向上させるための問題意識を持つこと、ようするに鑑賞眼と批判眼とを調和よく鍛えるんですね

クチナシの小品盆栽・新しい正面さがし


伸び放題のクチナシ、足元と幹筋をみると、なんかものになりそうな雰囲気をもっている
いままでの正面の図
ちょつといい感じだが、向かって右の枝が胴の正面近くから出ていて、その奥のほんとうの一の枝が見えない
しかし、これを切ると傷になる
おもしろくない
他の正面をさがそう


グルグルまわして新しい正面をさがす
考慮に入れるのは
根張り
立ち上がりからの幹筋
枝順
それからもちろん、全体的な図です


ありましたよ、ありました
向かって左側面に、新正面らしき、イイ感じのところがみつかりましたよ
足元は抜群ではないが、幹筋はいいぞッ、頭まで筋が通るぞッ
枝順は問題なし
この正面なら幹に大きな傷をつくらなくてもイイ
ここに決めた!


さてと、一と二の枝の無駄な小枝を切って、幹筋がよく見えるようにしてみる
頭をいままでのと立て替えるので切ろう
旧の頭は新の頭の後ろになっているので
とばしても、正面の傷にならないので,グー!


旧の正面から見ると頭が有りません!
この角度は新正面の斜め後ろになっています


どうですか?
頭を切り替えがポイントで、その他は大きな枝を切っていません
これで盆栽としての基本がきっちり整った模様木になりました
裸になってますが、クチナシは芽吹きのいい樹種ですから
1~2年で吹き込みます
(時期が真夏なので、少しは葉を残しました、5~6月の適期なら葉は全部切ります)
植え替えは来春です

完成予想樹高はわずか9cmです
この寸法でこの幹の力なら、けっこう眺められますね

改作成功なので
盆栽市場へ売りに出しました
関心のある方はそちらへどうぞ

長寿梅の小品盆栽・足元を掃除するだけ



なにかいい雰囲気が匂うんで、買ってみました
現在、古いところが魅力ですが、株立ち状ではっきりした図が見えていません
なんかものたりない
思い切って
苔に覆われた部分はどんな風になっているのか、全容解明です!


なんと!なんと!
根上がり状に立ち上がった幹が横たわっていたのです
そこが苔に覆われて、株立ちにみえていたんですね
こんなにしっかりした幹が出現するとは、思いもしませんでした
感激!感激!
さっそく金ブラシでそっと掃除です(幹を傷つけないように)


掃除のあとは剪定です
枝が全体に上の方に向かっています、左右に張り出したように整えたいですね
まず向かって左の立ち枝をチョキン
これだけで木姿に動きが出るでしょう
ようするに、流れを作るんです


ゴチャゴチャした胴吹き枝を切り取って、幹筋をはっきりさせます
必要な枝を切らないように、事前によく検討してくださいね


どうです
だんだん図がでてきたでしょ
幹筋をはっきりさせて、枝の動きを調整していくと、構図が決まってきます
頭も詰めます


出来上がりました
針金も使っていません
ハサミだけで図が出ました
鉢が映ってはいませんが、根上がり状に立ち上がった幹が力強く屈曲して
最後に鎌首を持ち上げています
樹高わずか10㎝の長寿梅の小品が装い新たに、デビューしました

さて今後です
地面と平行している幹の部分が、ちょっと長いような気がします
丸か六角鉢に入れて、やや懸崖風に植え付ければそれも解消します
寸法が短くて古いので、かなりの盆栽に出世するでしょう



今日の講義はこれまでですが、いかがでしたか?
盆栽は永久に未完成です
その持っている個性を、充分に発揮しているものばかりではありません
せっかくいい素質を持ちながら、実力発揮できずにいる盆栽達は、たくさんいます
みなさん!まずご自分の盆栽達が実力発揮しているか、それからとりかかりましょう!
掃除ひとつで、再デビューできるものがあるはずです
この講義により、盆栽を見るみなさんの眼つきがかわってくだされば幸いです
ではまた9月にお会いしましょう

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