この「壺中楽天・こちゅうらくてん」は、今年の8月1日に近代盆栽より発行された
~土に生き炎と苦闘した陶工~「平安東福寺」における「東福寺絵鉢名品撰」の中に
全1ページを割いて詳しく解説された名品中の名品です
ここに改めて解説するとともに、みなさんにゆっくりご鑑賞していただきたく掲載しました
平安東福寺 染付正方鉢 銘「壷中楽天」 間口5.6×奥行5.6×高さ4.2cm
東福寺はその長い作歴においても、磁器もの、ましてや絵付け鉢は数えるほどしか制作していません
(絵付け鉢は100点、多く見ても200点以内といわれている)
その中においてこの「壺中楽天」は群を抜いた知名度を誇る究極の最高傑作とされ
豆鉢コレクターの間において、昔から名作中の名作として知られているところです
「壺中楽天・こちゅうらくてん」の銘の源は、中国後漢の故事に由来し命名したもので
この世の別天地とされ、自らの好む別世界という意味に理解できるでしょう
世俗を離れた別世界となれば盆栽と陶芸にほかなりません
東福寺は「三昧の世界に生きる自らの境遇とその心境」をこの鉢において主張しています
古代中国人は、蒼穹(天)は円く、そして地は方形という宇宙観をもっていたいわれところから
正方形で鉢の内縁を円くした特殊な形状の樹鉢は、その古代思想を具現したものと考えられます
凝りに凝った含蓄のある命名をしたものですね
「世俗を離れて、おれは三昧の別世界に生きるんだぞー」
天才・東福寺はそう叫び、作陶の世界に生涯をかけました
ゆえに、「壺中楽天・こちゅうらくてん」という銘から私たちに伝わってくるのは
小品盆栽を楽しむ遊び心とともに、陶芸にかける若き日の水野喜三郎自身のすさまじい闘魂です
直線と曲線の奇抜な組み合わせによる形状は、東福寺幾多の名作の中にあって出色です
天才・東福寺の非凡なセンスが遺憾なく発揮されています
四面に剣木瓜(けんもっこ)形の窓を切りそれぞれに異なった絵付けを施し
周囲の文様もそれぞれに異なっています
呉須の色がこれほどに冴えている東福寺の染付けも珍しく
観るものに新鮮な感動を与えてくれます
胴のくっきりとした直線と鉢口の曲線の組み合わせの妙
さらにふっくらと盛り上がった縁がこの豆鉢にえもいわれぬ温もりを与えています
この鉢の持つ独特のふくらみが「「壺中楽天・こちゅうらくてん」の銘の意味する
自らの好む別世界において三昧の心で遊ぶ、という自由な精神性にピッタリしています
濃い呉須の色とユーモア味のある画風は独特
前ページの作品↓と同一の絵付師によるものです
別正面より
別正面より
楕円の中に東福寺(通称わらじ落款)
青味がっかった白磁にも品格が感じられます
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